それじゃ、完全にこっちは占われ損じゃないか。

タロットのようだけど、Bの知っているそれとは少し違うカードたちを見おろしながら、面白くない気持ちになる。

主人は、へえとかふーんとか勝手につぶやきながら、カードを開いていった。



「うーん、女性…女の子? 純真、処女」



かじりかけのリンゴを噴き出しそうになった。

そんなBをおかしそうに眺めて、主人は続ける。



「成就、後悔、修復…どう、合ってる?」

「修復は合ってない」

「現状でないなら、願望だとしたら?」

「それじゃ、誘導尋問じゃないか」



全然占いじゃない。

そう言い返すと、あら、と笑われ。



「占ってほしかったの?」



勝てそうにないので、もう黙っていることにした。



「家族絡みの波乱が多いみたいね、苦労してるけど、そこに後悔があるわけじゃ、ないのね」



しんしんと降る雪の音が聞こえそうな静けさの中、カードをめくる乾いた音が響く。

主人は時折、手元のボードのようなものを見ながら、ふんふんとひとりでうなずいていた。



「終わりと再生のくり返しね。そんなに遠くない過去に、何かが一度、終わってる。今はそこから再生して、まだ途中」



急速に喉が渇いた。



「最初はもっと遠い昔、次は13歳ね」



父親が死んだ年だ。

とすると最初というのは、母親に捨てられた年か。

こんなふうに、占いの結果に自分から過去を当てはめているようじゃ、思うつぼだよなあと考えつつも、ついやってしまう。