最後には遠慮がちにそう訊かれてしまい、笑った。

うん、と答えて、曖昧だったかと思い。



「俺は、女の子が、好きだよ」



そうつけ加えたはいいものの、改めて宣言するほどのことでもなかったな、と乾いた風に吹かれながら反省した。








最近は、車のほうから名乗り出てくれるんだから、楽だ。

言うほど昔を知らないけれど。


パチンコ屋に入る男性客のポケットから、すれ違いざまに失敬した車のキーのスイッチをカチカチと押しながら駐車場を歩く。

少し先で、ピッという電子音と共に、主人の帰りを喜んでいるようにハザードを点滅させた車がある。

濃紺のワゴンで、そこそこあちこちをいじってある雰囲気があった。



「どのあたり行く?」

「お邪魔しまーす」

「うわっ、ヤニくせえ」



3人いた仲間が口ぐちに言いながら乗りこむ。

Bも助手席のうしろに収まり、煙草をとり出した。



「B、お前まだ学ランじゃん、バカか」

「寒いんだもん」

「そういうこと言ってんじゃねーよ、しょーがねーな」



一番年長、といってもまだ15歳にもならないひとりが、気前よくブルゾンを脱いでBにくれる。

ありがたくそれを羽織って、温まらない手をポケットに突っこみ、ひざを抱えるように後部座席に脚を引きあげた。


四人の乗った車は夜の国道をあてもなく走った。

オレンジ色の街灯が時折彼らを照らし、右手には黒い海が静かに寝そべっている。



「まだ寒いの?」



丸まっていると、隣のひとりが声をかけてきた。

この中でBは最年少で、それは誰がどう見たって、ひと目でわかった。