時間くれよ…と泣きそうな声で顔を覆って、また布団に倒れこんでしまった。

可愛くて、その頭を抱きしめてキスを降らす。

少しバカにされているのを感じるんだろう、先輩はじっと動かずに、ふてくされていた。


ねえ先輩、楽しいですね。

千歳さんにも一歩くんにも、幸せが降って。

毎日だんだん忙しくなって、きっとそのうち、こんなふうにゆっくり過ごせる土日も、貴重になってく気がします。


学生の頃とは、違いますね、何もかも。

でも、違っていいんですね。

変わったねって言えるのが、一緒にいた証拠。


ねえ先輩、幸せですか?

毎日幸せ?


しつこい私に観念したのか、先輩が寝転がったまま、私を引き寄せた。



「今日会った、みずほの先輩さあ」

「かっこいいでしょう、あの方。エースなんですよ」

「俺、なんかすっごいチェックされた気がする。みずほ、人気あるね」

「父と兄のチェックに比べたら」

「………」



チェックされることを想像しているのか、千歳さんの相手をチェックすることを想像しているのか、沈鬱に黙る。

そのままじっと私の頭をなでて、ふいにつぶやいた。



「頑張ろ、俺」

「何をですか?」

「いろいろ、挨拶とか」

「そんなに気が重いようでしたら、来年でも」



いや、と妙に頑なに首を振る。



「そこを超えないと、千歳の相手にも会えない気がする」

「よくできました」



ぎゅっと背中を抱きしめて褒めてあげると、先輩が犬みたいに、私の肩に額をこすりつける。

ちょっとからかってみたくなって、訊いた。



「どうします、いけすかない相手だったら」

「ボッコボコにして沈めるよ、決まってるじゃん」

「沈…」