時間が解決してくれるものもあるよ。

そう言って笑う。

人の台詞とらないでください、とふくれた。


ねえ信じても大丈夫ですか。

何もかも、前に進んでますよね。

私、先輩と一緒にいる意味、ありますよね。



「…部屋探し、終わらせてくれますか?」

「なんで? 続けるよ」

「えっ」



私の言ったこと、伝わってないんじゃない!

目で抗議すると、先輩が楽しげに笑う。



「なんか誤解してるよ。引っ越したいのは、純粋に風呂が狭いのが嫌だからだよ」

「そんなに嫌ですか?」

「だって一緒に入る気にならないでしょ、ここの」



…一緒に入るために引越すの?

そう尋ねると、そうだよ、と平然とうなずかれた。



「俺ひとりなら、環境なんてなんでもいいよ。調査期間中とか、トイレなんてただの穴だよ」

「穴…」



ちょっと身震いした私を、黒い瞳が優しく見た。





「みずほがいるから、探したいんだよ」





楽しそうに、満足そうに。

両手を握って、手のひらをなでてくれる。


温かい手に、心がほっとゆるんだ。


私、なんだか、必死になりすぎていたのかもしれない。

自分がいる意味とか、前進してる証拠とか、そんなものが欲しくて、躍起になっていたのかもしれない。


一緒にいると幸せ。


それでいいんだっけ。

そんな単純なもので、いいんだっけ。