なんで泣くの、と笑われた。

悔しくて、首にしがみついて顔を見られないようにした。


持ったままだったお箸を、先輩が私の手からとりあげて。

きつくきつく抱きしめて、頭をなでてくれる。



「勝手してごめん」

「謝らなくて、いいです…」

「ありがと、待っててくれて」



声にならなくて、肩に顔をうずめたまま首を振った。

まあでも、と先輩が言う。



「ほんとに待ってたか、怪しいけど」

「誰とも何も、してませんったら」

「まあ、確かめればすぐわかることだし」



意味ありげに、先輩の手が私の腰骨のあたりをなでる。

まだそうやって上に立とうとするのにかちんと来て、身体を離してにらんだ。

言っときますけど私、あの頃の先輩より、年上なんですよ。



「じゃあ確かめてください、早く」



どうせ潔白ですから、と胸を張ったつもりが。

一瞬ぽかんとした先輩に、大笑いされた。

えっと戸惑う私をまた抱きしめて、息を切らしながら笑う。


せめて食べてからでいい? とからかうように訊かれて。

ようやく私は、自分が何を言ったのか気がついた。



「そんなつもりじゃ」

「いいけどね、今すぐでも」



嫌です、と言う顔が熱い。

もう、なんで今さらこんな失態。



「ほらね、すぐそうやってボロが出るから」

「なんですか」

「俺以外とは、しないほうがいいよ」



どんどん顔が熱くなる。

くすくすと笑って首筋に噛みついていた先輩が、ふいに言った。