三年半。
千歳さんが一歩くんを産んでから、B先輩が槇田先輩にたどりつくまで。
そこからまた、三年半。
先輩が姿を消してから、再び私の前に現れるまで。
それだけかかった。
マ・スール。
許されることを望んでいない人は。
どうしたら、解放してあげられるんでしょう。
「えっ、都内ですか」
「今は外れのほうだけどね」
なんと。
連絡がつかなかった間、先輩は東京の大学に通っていたらしい。
「退学したって…」
「違うよ、編入したんだよ、もう一度3年生やるはめになったけど」
「考古学ですか?」
「古生物学。千歳の奴、何度言っても覚えないんだなあ」
夢を見てるのかも、と数分に一度、思う。
この畳の部屋でまた、先輩と並んで寝てる。
なぜなら私がそう仕向けたからで。
かつ、いろんなことがそれを後押ししてくれたからだ。
朝、ふと思いついた私は、卒業式のあとで善さんに顔を見せに行きましょうと提案した。
『先輩をずっと恋しがってるんですよ』
『気持ち悪いなあ』
思わずバッグで殴る。
いて、とそれを受けた先輩は、とにかく待ってるよ、と言ってくれた。
『よお嬢ちゃん、似合うな、すっかり大人だな』
本当ですか、とスーツがよく見えるようにポーズをとると、うんうんと満足げに善さんが煙を吐く。
『それに比べて…』
てめえはなんだ、と鉄拳が飛んだ。