『あとは?』
『イライラしてる時とか、逆に気分がいい時とか。緊張してても吸いたくなるし、のんびりしてても吸いたくなるよね』
『結局、いつでもなんですね』
『最初にそう言ったよ』
『今は?』
『めちゃくちゃ吸いたい』
午後の日差し。
畳の匂い。
少し湿ったシーツ。
『…疲れたからですか?』
『それもあるけど、こういうことしたあとって、すごく吸いたくなるんだよね、なんでか』
『吸っていいですよ』
『ここじゃ吸えないし』
『ですから、表で吸ってきていいですよ』
『煙草くさくなるし』
『いつものことでしょう、遠慮なさらず、どうぞ』
不満げな声。
抱き寄せる腕。
熱い肌。
『“えー”?』
『俺だって、煙草吸うよりしたいことくらい、あるんだよ』
『はあ…』
『ないの?』
『私は煙草を吸わないので…』
『そんな屁理屈を言う子に育てた覚えは、ないよ』
『育てていただいた覚えもないです』
『そう?』
『………』
『ほんとにそう?』
探る指。
絡む吐息。
重なる唇。
――優しい瞳。
――笑い声。