4月からの部屋を、探さなきゃ。

どこに住もう、どの路線で通勤しよう。

どんな部屋にしよう、どこに寄り道しよう。


空想するうち、涙が浮かんだ。

一瞬で過ぎ去った4年間。

楽しくて、毎日が充実していて、たぶんそれなりに、成長もできた。


でも先輩。

あなただけが、足りなかった。



得たものとか、みんなで分けあったものとか、あげたものとか、あげられなかったものとか。

いろんなことが頭を駆けめぐって。



誰もいないのをいいことに、少し泣いた。








それはまったくの偶然だった。

2月の、凍えそうな日。


出かけた帰り、母の家からほど近い書店で、なんとなく雑誌のコーナーをうろうろして。

ふと恐竜の表紙の本に目が行って、手にとった。


学術系の出版社が出しているムック本で、かなり専門的な内容を、あくまで一般層向けに、ライトに書いてある本だ。

装丁もシンプルなんだけどスタイリッシュで、面白いな、とページをめくっているうち。

ある記事の、文末の署名に。



呼吸がとまった。








――文:B.Ban