うなずきながら、しみじみと自由だなあと感じる。

遅くなるから、なんて誰に断る必要もない。

誰と一緒なの、とか訊かれて憂鬱になることもない。


だけど帰ったら部屋は真っ暗で、電気をつけてもひとりだ。

それをさみしいとか心細いなんて思うのは、贅沢なんだろうなって気がした。


ぞろぞろと駅に向かっていると、校門のあたりで、もう見慣れたうしろ姿を見つけた。

珍しく、走っていない。


案の定、先輩たちが背後からタックルするように肩を組み、飲みへと誘う。

B先輩って、なんだかんだ人気者なのかな。



「Bゲット、Bゲット」



勝訴、とでも言うように、その情報がみんなの間を駆け巡った。

並んで歩いていた2年女子の先輩が、珍しーと声をあげる。

私はなんとなく、B先輩の顔をまともに見られずに、小さくなっていた。







歩いて数分の駅前には、ここの学生以外誰が来るんだろうっていう居酒屋がたくさんある。

広いお座敷に十数名がわらわらと座り、私は落ち着いたらお手洗いに行こうと、入り口近くの席をとった。



「あれ」

「あっ…」



こんばんは、ともごもご言うと、隣に座ったB先輩がにこりと微笑む。



「いたんだ」

「初めてですね、こういうところでご一緒するの」

「そうだね」



先輩は、みんなビールでいいよな、という声に特に反応するでもなく、熱いおしぼりで手を拭いている。

たぶん今日も、ほどほどのところでさっと消えるつもりなんだろうという気がした。

だから、出入りしやすいこの席を選んだに違いない。



「大学、慣れた?」

「ぼちぼちです」



お店に入った瞬間から裏で用意されていたに違いないピッチャーがどかどかと回ってきて、私はそのひとつを先輩に注いだ。