この間の女の人たちは、妬けるって言ってた。

あれは向こうも先輩を好きってことじゃないの?

なのに先輩をふるの?


先輩は楽しそうに、ははっと笑うと。

そうだな、とどっちつかずな返事をくれる。



「そういう一方的な感じでもないんだけど」

「今は…?」



薄く開けた窓から、リーリーと虫の声が入ってくる。

私の肩を抱いたまま、先輩はしばらく、何も言わなかった。

私は怖くて先輩の顔を見られず、胸にしがみついていた。


ふいに、ぎゅっと両腕で抱きしめられる。

さっき一緒にシャワーを浴びた身体は、同じボディソープを使ったはずなのに、私とは違う匂いがする。

似たようなことを先輩も考えたのか、私の首筋に顔をうずめて。

さらに数瞬ためらったあげく、くぐもった声をあげた。



「ひとりだけ、だよ」



夢中で抱きついた。

涙を先輩のシャツで拭くと、こら、と上を向かされる。

ぶつけて貪るようなキスをする。

私のほうが先輩を食べに行っているような、情動に任せためちゃくちゃなキス。


B先輩、と涙声で呼ぶと、ん? と優しい返事が、重なった身体を伝わってきた。



「好きです…」



顔を見る勇気はなかった。

先輩の首にしがみつきながら、ささやくのが精一杯だった。


B先輩の身体が、少しだけ熱くなった気がした。

小さく息をのむ気配を見せた先輩は、私を痛いほど抱きしめて。





「ありがと…」





初めて聞くような、揺れた声で、そうつぶやいた。