疲労困憊の身体をタオルケットにくるんで、ほてりがおさまるのを待ちながら、記憶を探る。

これと思うものはあったんだけれど、表現が見つからない。

ええと…と言葉を探して、先輩に抱きつく身振りをした。



「あの、こういう…コアラみたいな」



隣に座る先輩が、いきなり大笑いした。

そんなに笑われるようなことを言ったかと驚くと、汗で濡れた髪をかきあげて、先輩はなおも笑う。



「座ってするやつ?」

「そうです」

「あれが好きなんだ、素質あるね」



訊かれたから答えたのに、そこまで笑われると傷つく。

ふてくされてタオルケットに潜りこむ私の肩を、なだめるように先輩がぽんと叩く。

それにすらかちんと来て、声が低くなった。



「じゃあなんて呼んだらいいんですか」

「呼びかたはあるんだけどね、教えてあげない」

「どうして」

「俺たちの間ではコアラで通じるし、いいでしょ別に」



言いながら、まだ喉の奥でくすくすと笑ってる。

絶対にからかってる。

私が誰かに訊いて、恥をかくのを狙ってるんだ。


その手には乗るもんかとすねた気分で、ごろんと反対側を向いた。

お詫びのつもりか、先輩がこめかみに、必要以上に優しいキスをくれる。


俺たちの間では通じるし。


その言葉が、頭の中を回った。

先輩に見えないところで、タオルケットを握りしめる。


誰とでも「つきあうでもなく、数回で終了」なんですよね、先輩。

通じる必要なんて、ありますか?



ねえB先輩。


私に残されてるのは、あと何回ですか――?