先輩が、私が熱くなるのを待ってくれているのがわかる。

ゆうべのぶんまで、溶かそうとしてくれているのがわかる。



「まだ無理かな」

「よく、わかりません…」

「でも、俺も少しは、余裕出たから」



昨日よりは気持ちよくしてあげられると思うよ、と妙に満足そうに笑うその黒い瞳は。

こんな生々しい空間には不似合いなくらい、清潔で。

下を向きがちな長い睫毛が、目を伏せるとほとんど瞳を隠してしまうのを、間近に見ながら。

この夢はいつ覚めるんだろうと、改めて不思議になった。








――先輩、あの日々は、今もきらきらと。

私の胸に、輝いています。



幼かった。

だからこそ勇敢で、けれどまた、盲目だった。



でも先輩。

もしかしたら私は、確信していると。

そう、言えるかもしれません。



何ひとつ知らずに、何かを知った気になっていた、あの頃でさえ。



私はやっぱり。


本当に大切なことには。





気がついていたんだと。