びっくりして、口を離す。

先輩が、顔を見せまいとするように、私をがっちり抱きしめて離さないので、やっと理解した。

“ダメ”って、そういうことか。


まさかと驚いた。

すごい、私が先輩を、こんなふうにできるなんて。

すっかり嬉しくなって、ぎゅっと抱きついて、同じところにしつこくキスをする。


やめて、という不機嫌な声は無視した。

やめて! とだんだん声が厳しくなるのを笑うと、ついに頭に来たのか、タオルケットの下で突き飛ばされる。

見せたがらなかった顔は、わずかに紅潮して、悔しそうな瞳が濡れていた。


その弾む息に、なんだか満足する自分がいる。

先輩可愛い、と思いながら、一方で怯む自分も。

それ以上に、悦ぶ自分も。


片腕をついた先輩が、じろっと私を見おろした。



「襲っちゃうよ、そういうことすると」

「願ってもないです」

「願ってないなら、やめよう」

「この言い回しの意味はですね」

「冗談だよ」



ですよね、こんな昼間に、と笑おうとしたら、突然のしかかるように押さえこまれて、唇をふさがれた。

仰天しつつ、スカートに入りこむ手から必死に逃げると、先輩がふふっと噴き出す。



「ひどい」



からかいましたか、と声を荒げる私を、半身を起こした先輩が、微笑んで見おろした。

ずるい、ずるい、そんな余裕。

私はまだ、こんな程度のおふざけで心臓が痛くなるくらい、幼稚なのに。

ふてくされる私に、まさか、という声が降る。



「まさか?」

「からかったんじゃないよってこと」

「え…」



ゆっくりと身体を倒して、先輩がキスをくれる。

のかと思ったら、違った。

ぽかんと開いた私の歯の隙間から、遊ぶみたいに舌先を入れて、さっと私の舌をかすめると、いたずらっぽくにこっと笑う。



「ほんとに、するもん」