「また寝るんですか?」
「せっかくバイトが飛んだから、寝だめしとこうかと」
「人間は、寝だめできないんですよ」
「気は心って言うじゃん」
言いながら、はい、と私に何かほうる。
さっきまで着ていた、Tシャツとスエットだ。
「あの、これ?」
「その恰好で寝たら、シワになっちゃうでしょ」
えっ、私も寝るんですか?
先輩が寝るなら私、おいとましようと思っていたのに。
というか、そういう流れになるよう、さりげなく持っていってるんだと思ったのに。
先輩自身は着替える気はないらしく、パーカーを脱いでハンガーにかけると、ごろりと仰向けになって手で私を招いた。
「まだ着替えてません」
「いいから」
手を引かれるまま横になり、肩に頭を乗せると、障子越しの日差しが部屋中に降り注いで、なんて気持ちいいんだろうと吐息が漏れた。
枕にしてくれているほうの腕で私の頭をなでながら、先輩が笑う。
「ここに住んでて、昼寝しないとか、ないでしょ」
「はい、畳がまた、いいですね」
「この部屋の畳、まちまちなの、気がついた?」
気がついた。
まだ青かったり、すでに焼けていたり、縁の柄もちぐはぐで、どうしてなんだろうとずっと思っていた。
「善さんが、試験的にいろいろ替えてくんだよ、ほら」
これとこれ、と枕元の二枚を指さす。
「同じくらい日焼けしてるけど、こっちのほうが綺麗なの、わかるでしょ」
「素材が違うんですか?」
「そう、畳って、焼けると質の差が如実に出るんだよね」
先輩の指したうちの一枚は、ところどころ黒く変色したいぐさがまざって、まだらになっている。
もう片方は、ムラなく日焼けして美しい。