みそが死んでから、1週間くらい経ったときだろうか。
すっかり落ち込んでいるわたしたちを見かねて、近所のおばさんがどっさりといろんな本をくれた。
なんで本なのかはよくわからなかったけれど、みその最初の飼い主である近所のおばさんなりに、他に興味が移ればといろいろ考えてくれた結果なのだろう。
その本は、ほとんどが近所のおばさん家の息子のおさがりだったのだけど、単純なわたしたちは素直に新しいおもちゃに喜んだ。
主に図鑑が多く、昆虫図鑑や動物図鑑や宇宙図鑑や恐竜図鑑など、とにかく子供心を鷲掴みにするようなものばっかりだったわけだ。
そんなこんなで、わたしと春霞はふたりで夜中まで読み漁るくらいにがっしりがっつり心を掴まれてしまって。
結果、近所のおばさんの思惑通り、みその死という悲しみから抜け出すことができたのだった。
本の中で、春霞が一番熱心に見ていたものがある。
恐竜図鑑を読んでいるわたしの隣で、春霞はよく『天然石の本』を読んでいた。
それは他の図鑑とは違い子供向けに書かれたものではなく、割と詳細にいろんな石の成分やら産地やらパワーやらが記載されていて、つまり他に比べるとかなりつまらないものだったわけだけど。
なぜだか春霞は頻繁に、その本を手にして読んでいた。
興味がある、というわけではなさそうだった。
そういう意味では宇宙図鑑の方がよっぽど楽しそうに眺めていたし、むしろ石なんて他の何よりも興味なんてなさそうな様子だった。
実際、基本的にはほとんどのページをぱらぱらと流し読みしていたに過ぎなかった。
けれど春霞はその本の、たった一部分だけを、焼き付けるようにいつもじっと読んでいた。