死んだ人、それが例え祖父母でもあたしは触れなかった。
冷たくなった人を触るのは怖かったから。
でも自分の親となると平気で触れるものなんだと知った。
あたしは布をほとんどかけずに母の頬を何度も触った。
「お母さん」
呼んでも相変わらず返事はない。
頭のどっかで『これはウソです』と言われてる気がして実感がない。
2日目、あたしは斎場の入り口に飾るスナップ写真を探して選んでいた。
父が遺影を決めてバックの柄は兄が決める事になっていた。
そしてあたしはかける曲とスナップ写真。
「あれ?ない?」
あちこち探してもあたしが探したい写真がなかった。
「何ウロウロしてんの?お前」
あたしも兄も一切寝ていない。父は当日大変だから睡眠薬を飲んで寝ている。今はまだ起きてるけど。
父や兄も遺影の写真で悩んでるみたいだった。
母の親戚が「これいいじゃない。これにしなさいよ」と言った事に父はキレて「アンタに関係ない!家族で決める」と怒鳴っていた。