アサヒを見送って店に戻ると、苛立った顔の都築と青ざめた鈴木がいた。
(あたしがリーダーなんだからしっかりしないと)
席に座って飲みかけのビールを一気に飲む。
「優雨、アサヒは?」
鈴木が言ったけどあたしは首を振った。
「都築、どうしてそんなにアサヒを否定するの?嫌いなの?」
「嫌いだよ。これ見よがしのこのバンドのなり方も全部」
都築はタバコを吸い出した。
「どういう事よ」
「身体の不自由な青年がギターと出会いバンドを組む、そのバンドには昔イジメられて自信がないベーシストとバカがつくくらい熱血なドラムの女がリーダーシップを取って何とか保っている「お涙ちょうだいバンド」。その設定に腹が立つ」
「あたし達はそんなつもりじゃない!」
「お前らはそうかもしれないけど、世間ってのはそういう風に見るんだよ!だから普通のギタリストがいてそんな話題かき消してやろうと思ったんだよ!悪いか!?・・・まぁ、本音は俺だって注目されたいって思ってるけどな」
「都築!!」
あたしが殴ろうとする手を鈴木が止めた。
「まぁ、俺は抜ける気ないけどな。抜けるならアサヒだ」
あたしはその場にしゃがみ込んだ。
「ねぇ、教えてよ。追い込んでるのは・・・、アサヒを追い込んでるのはあたしなのかな・・・?」
都築はあたしを一瞥して言った。
「さぁな、自分で自分を追い込んでるのは間違いねーけどお前のそのポジティブさが時には重く感じる時だってあるよ。俺らだって感じるんだからアサヒにはかなりキツいんじゃないか?」
あたしが・・・追い込んでる??