スタジオに戻ると「アサヒは?」と鈴木が聞いてきた。
「お悩み中。でもそれって大事な事じゃない?」
あたしは笑いながらスタジオの真ん中に置いてある作曲用のノートを手に取った。
「どれどれ・・・」
ページをめくると沢山のコードが数式みたいに並んでいる。
その横には「×」とか「?」とか書いてある。
曲の数はざっと見ても20曲くらいある。
「うーんと・・・、都築、ギター貸して」
「あぁ!?何でお前みたいな女にこの高価なギターを貸さなきゃなんねーんだよ!!」
「コード弾きたいからよ。・・・本当にケチくさいわね・・・、あ!アサヒのあるじゃん」
アサヒの立てかけてあるギターを掴むとあたしは胡座をかいてノートを見た。
「優雨、弾けるの?」鈴木が言う。
「コード弾きくらいならね。この「×」がついてる曲に興味あるから弾いてみたくてさ」
そう言ってあたしは「×」の曲を弾き始めた。
「ヘタクソだなお前」都築が悪態をつく。
「うるさい。だからコード追っかけるくらいしか出来ないって言ったでしょ」
3曲くらい弾いてみてあたしは思った。
「あのさ、この「×」の曲をミックスさせたらすごくいい曲出来ると思わない?」
「・・・まぁ、素材はいいの結構あると思うけど」
鈴木が言う。
「作曲アサヒ!編曲はJamsってのはどうかな?この「×」全部弾いてみようよ」
あたしは2人ににんまり笑った。