その日は晴天で、あたしは旅先で知り合ったバックパッカーの黒人女性とオープンテラスのカフェにいた。


「優雨、お願いよ。ジャパンは高くて泊まる所がないのよ」


彼女は喋り倒しているのを腕組みをしたまま黙って聞いていた。

彼女とはエジプトで知り合って、5人が雑魚寝するような宿泊先で知り合いになり、その日は部屋のみんなでお酒を飲んで盛り上がって寝た。

翌日、部屋の中のあたし以外は「財布がない」とか「時計がない」と大騒ぎになった。

1人旅の基本。貴重品は抱えて寝る。

あたしは財布とパスポートは下着に挟む。


あたしは彼女じゃないかとすぐわかった。

昨日は自慢していたネイルがはがれている。物を漁った証拠だ。


あたしはそれを誰にも言わなかったし、みんな「ついてない」と悪態をつきながら警察やカード会社に連絡をしていた。



その彼女が日本へ旅に来て、どうやら泊まる所に困ってあたしに連絡入れてきたみたいだ。


「優雨!」


彼女は懇願したけど、あたしは彼女全く信用していない。


「悪いけど、あたしの家には泊めれない。代わりにほら、あそこに看板見えるでしょ?あれネットカフェって言うの。あそこ安いしシャワーにも入れるしPCも自由に使えるよ。あそこに事情説明してあげるから。どうせ英語通じないし」


あたしが英語で捲し立てて説明すると彼女は「嫌よ」と拒否した。





その時、アサヒに初めて出会った。


ドサっと何かが倒れる音がしてあたしは振り向いた。


そこには転んで、ガードレールに掴まって必死に立ち上がろうとする線の細い青年がいた。