「さて、アサヒ待ってたわよ。早く聴かせてよ」
優雨はお菓子でももらう子供みたいに目をキラキラさせている。
「どうしてもやんないとダメ?」
俺が眉間に皺を寄せても首を縦にしか振らない。
「やってくれないならかかと落としするね」
(笑顔でとんでもない事言う女だな・・・)
仕方なくノートを出してパラパラとめくりながら聞いた。
「マイナーコードで作ったのとメジャーコードで作ったのどっちがいい?」
「え!?アサヒ両方作れるの!?」
鈴木がビックリしている。
それまで何度もギターを写メしまくってた都築が言った。
「素人なんだからメジャーコードから行けば?何でマイナー作ったわけ?」
「マイナーの音が好きなだけだよ!うるせーな。聴きやすいんはメジャーだって事くらいわかってるよ。共感されるのも口ずさむのも売れるのもメジャーからだからな!」
俺はメジャーコードで作ったページを開いて音を鳴らそうとしたけど、優雨に待ったをかけられた。
「アサヒ、マイナーから聴かせて」
「はぁ!?」
「いいからいいから」
ため息をついて違うページをめくってギターを弾き始めた。
歌詞はないからメロは「ラララ」。
声も震えてないし、ギターも普通に弾けたけど背中には緊張の冷や汗がつたった。