(メロはこんなんだよな)
そう思いながら鼻歌まじりに弾いているとみんなの視線を感じる。
1曲演奏終わって、周りを見るとポカンとしている。
「俺、間違った?」
俺が聞くと「アサヒ、歌ってたよね?」優雨がそう言った。
「あぁ、メロをちょっと・・・。って何で知ってるの?」
ふと横を見るとマイクに目がいく。ONになっている。
「うぁ!!!!何だよ!?何でマイクがONになってるんだよ!!」
「やっぱりアサヒがギターボーカルに決定。ねぇ、他のバンドの龍平から見てもアサヒの声質ってボーカルに向いてるってわかるよね?」
「そうだな・・・。歌った方がいいんじゃないか?ってよりお前のギター覚えるスピードと実力に俺は土下座決定か?」
肩くらいのいかにもな髪型の襟足をかいて龍平が言った。
「いらんよ・・・、あ、その代わりに対バンやろうよ。お前客いっぱい持ってるじゃん」
「ビジュアルとロックが対バンなんて聞いた事ねーよ」
「いいじゃん!!楽しそう!!鈴木は?」
優雨が楽しそうに笑う。鈴木も「僕はベース弾けるならそれでいから」と言った。
俺達が盛り上がっているのに我慢出来なかったのが都築が大声を出した。
「テメエらいい加減にしろよ!!!!」
その言葉で俺達は振り向いた。
「この俺が弾いたギターよりもアサヒくんが上手いっていいたいのか?ふざけんなよ!!!」
「ねぇ、都築。アンタの音に心が全く響かなかった。好きでもないアーティストのCDを嫌だって言うのに聴かされてる気分になった。アサヒのは実力じゃないの。ちゃんとギターが好きで心にグサリってくるから龍平も土下座しようか?って言ってるの。高い楽器持ってるからって上手くなるわけじゃない。鈴木みたいに1本1本、自分の仲間だと思ってメンテしてるのとも違う。だからアンタの音は響かない」