「龍平」
意外だけど優雨は龍平に声を掛けた。
「何だよ」
「この人、本当にギター好き?技術でも何でもいいけどアンタの感想を聞きたい」
「お前耳いいんだろ?聞きゃわかるんじゃないか?俺も知らん」
ギターを肩にかけると都築は立ち上がってコードを押さえず全解放で音を鳴らしてから今流行のロックを弾き始めた。
「え・・・?」
龍平も含め4人でキョトンしてしまう。
都築本人は陶酔したように演奏し続けている。
「おい、龍平」
俺が声をかけると「え?」と返事が返ってきた。
「お前、本当にコイツをメンバーに入れようとしてたわけ?」
「バっ!!バカ!あんなギターこの年齢で持ってたら才能あるって勘違いするじゃんか!!」
「確かにな・・・」
都築の演奏は『普通』というカテゴリーにピッタリハマるようなくらいに特徴も胸に響くものもなく、しばらく全員黙って見ている事しか出来ない。
「アイツお前らにやるからな、俺は知らん」
龍平の言葉に俺は仰天した。
「冗談じゃねーぞ!いらねーよ。責任持ってお前んところでやれよ。それに、鈴木があぁいうタイプってダメなんだよ」
「ベースのやつ?まぁデブだけど、すげー実力あるんだろ?俺あんまり嫌いじゃないけどな。あっちは嫌いだろうけど。優雨も」
「優雨は嫌いってより仲間がバカにされるのが許せないだけだよ」