夜になって受付でチケットをもらって出入りが自由に出来るように手にライブハウスの名前が掘ってあるハンコを押す作業をする。
「それ消えたら出入り出来ないから。トイレ行くなら中で行ってね」
流れ作業のように同じ言葉を繰り返す。
あたしがバイトしているライブハウスは地下にあるから階段で移動しなきゃいけない。
タバコにジッポで火をつけると上から何か怒鳴り声が聞こえた。
よくある喧嘩?
もしそうだったら筋肉自慢の店長に来てもらわないと。
一緒にいたスタッフの子に「見てくる」と行ってタバコをくわえたままあたしは外へ出た。
外では男の子が転んでいてそれを別の男の子が怒っている。
あたしこういうイチャモンが大嫌いだ。
「ちょっと!相手転んでるでしょ!何やってんのよ!!」
「あぁ?誰だよてめぇ」
立っている子がこっちを見た。
バカにするなよ、あたしは色んな国で殺されそうになってるんだからそんなツラしても平気なんだから。
「ここの従業員よ。あんた騒ぎ起こすなら店長呼ぶかあたしが相手になっても別にいいんだけど」
そう言って相手の胸ぐらを思い切り掴んでやった。
騒ぎを聞きつけた店長が現れたと同時に
「大丈夫ですから!」
という澄んだ声が聞こえた。
あたしは声の方を見た。それは転んでる子が発した声だ。
でも・・・この声、どこかで聞いた事がある。