「で、俺に何か用?」
そう言うと都築は口元を押さえて笑い出した。
「何がおかしいのよ!」怒鳴る夕陽に「お前は黙ってろ」と言った。
「そちらのバンドさんがひいきにしてるライブハウスのスタッフの子から聞いたんだけど、メンバー足りてないんでしょ?」
「だから?」
「俺、やってあげてもいいかなーって思ってるんだけど」
「は?何言ってんだ?お前」
「えーと、ギターボーカルがキミ、アサヒくん。ベースが鈴木くん。ドラムでリーダーが優雨ちゃん。バンド名は『Jams』。間違ってる?」
誰から聞いたんだ?店長?
・・・店長はそういう事は言わないタイプだし。
上月?いや、彼も言わない。
店で働いてる女の子の誰か・・・。
コイツのルックスならあっさり喋る子がいるかもしれない。
「ギター、やってあげてもいいけど。どうする?」
龍平の知り合い・・・。
断ってもいいけど・・・。
「何で俺達のバンドに興味あるわけ?」
「俺、バンド解散しちゃって暇だったけど、龍平のバンドに誘われたんだけどさ、嫌いなんだよね、ビジュアル系は。そしたら龍平からキミの話聞いたからどんなんかな?って興味が沸いた。それだけ」
見るからに自信たっぷりなコイツを見てると1年前の俺を見てるみたいだ。
自信過剰。世の中は俺中心で回ってる、女なんかに苦労なし。
「・・・メンバーに話してみるよ」
俺はそれだけ言った。