俺と同様に明らかに浮いた男が1人でステージを見てる。
ロンTにジーンズ。俺とたいした年齢も格好も変わんないようなヤツ。
腕組みをしながら黙ってステージを見てるからスタッフか何かなのか?
そいつがいきなりこっちに視線を移した。
俺を指差して何か言ってる。
「何か言ってるよ、お兄ちゃんの友達?」
「いや、知らん。何だ?」
そいつがどんどんと近づいてくる。
「何か怖いよ、知らないんでしょ?」
夕陽が俺の袖を掴んだ。
俺の前にそいつが来るとジロジロとお構いなしに見てくる。
「何か用ですか?」
俺が言うとそいつはニッコリと笑った。
「は?」
「アサヒくん。事故で身体が不自由だけど健気にギターをやってるんだよね?」
「誰、アンタ」
「俺は都築(つづき)。龍平の友達。キミの事は龍平から聞いてる」
俺が黙ってると夕陽がグイっと前に出た。
「ちょっと!人の兄捕まえて『身体が不自由』とか知らないくせに言うのやめてくれない?」
「あ、妹さん。てっきりスタジオで働いてる優雨って子だと思った。ごめんね」
それでも夕陽は睨みつけている。
生意気だけど結構兄思いなんだよね、うちの妹は。