「何かさ、歌詞とかがあたしダメなんだよね『刹那』とかいかにも!って感じが」
夕陽がジュースを飲みながら呆れている。
「でも、200人くらいか?呼べるのは結構実力あるって事か?」
「違うよ」夕陽が頬杖をつきながら否定した。
「やっぱさ、人口が少ないんだよ。北海道でビジュアル系は。G○AYだって元はビジュアルだったけど、結局は違う路線に行ったじゃん。今流行じゃないけど、それを求めてる人だってたくさんいるわけじゃん。たまたま龍平くんのバンドがその少ない人口に入ってるから人気あるってだけの話だと思うよ」
「お前、結構詳しいね」
俺が感心していうと「まぁね」と返事をした。
「毎日毎日バンドの話ばっかり聞かされてたら詳しくもなるって。しかもリハビリで兄もバンドやってます。プータローなのにねってなったら余計にね、耳に入るの」
「ふーん」
俺は夕陽の言葉に納得しながらステージに目を向けると龍平が客をあおっている。
そしてこっちに目を向けた龍平とモロに目が合ってしまった。
「ヤバ・・・」
「何が?」
「龍平と目合っちゃった」
「何がヤバイの?」
「いや、ちょっとね。色々あるんだ」
俺の言葉を聞いて夕陽が意外だなって顔をした。
「お兄ちゃん、龍平くんとまだ親しいの?あんなに仲悪かったくせに」
「まぁ・・・、親しくはないな。むしろ逆」
「へー。あ、珍しい。男の客だよ、お兄ちゃん」
俺は夕陽が指差した方へ視線を移した。