その週末、仕方なしに妹を向かえに行くと車に乗り込んできて
「運転出来るようになったんだね」
と嬉しそうに笑った。
「まぁね。友達は?迎えに行かなくていいワケ?」
「何か入り待ちするから先に行くって」
「そんなに龍平のバンドって人気あるのか?」
入り待ちするほどの演奏じゃなかった、優雨にこてんぱにやられていたし。
「知らない。曲聴いたけど興味なかったし」
妹の夕陽は明らかに興味がないみたいだ。
「で、場所は?」
「ススキノのセブンズってライブハウスだって」
「あぁ、駐車場と隣接してる所ね」
意外とデカイ所でやるんだな、そう思った。
俺が住んでいる札幌には小さなハコからドームまで結構ライブハウスがあると思う。
セブンズは200人か300人かそこらは楽に入れるハコ。
普通にメジャーなバンドもライブをやるくらい。
「知ってる?龍平くんって本名じゃなくて『RYU』って名前でやってるんだよ」
笑いながら夕陽が言った。
確か・・・前に会った時もそんな名前で予約入れてスタジオにいた。
「まぁ、ビジュアル系だからその方がかっこいいって思ってるんじゃない?」
運転しながら言うと俺の胸ポケットからタバコを奪い「1本もらい〜」と言ってライターで火をつけた。
「あのな、母さんにバレたら泣くぞ」
俺が呆れて言っても「いいじゃん」と涼しい顔をして煙を吐いた。