数日後。
時差ボケがだいぶ直ったあたしはライブハウスの床にモップをかけている。
「優雨ちゃん」
店長に声を掛けられて「はい?」と答えた。
この店長ってちょとオカマっぽいんだよね。
「この間行った国、どうだった?」
「あぁ、スリランカ?よかったよ。ジャングルがあって民族がいて素敵だった」
「アンタ、スリランカなんかに行ってたの!?てっきりアメリカやらヨーローッパに行ってると思ってのに」
「だって両方もう行ったもん。今は知らない部族と太鼓を鳴らすのが楽しいの」
笑って喋るあたしに店長は呆れながら「しばらく彼氏出来ないね」と言い捨てた。
「彼氏なんか興味ないからいいの!それより今日は誰のライブ?」
「インディーズのイベント」
「ふーん、面白そうじゃん。どんな爆音鳴らしてくれるのかな」
あたしは鼻歌を歌った。
大好きなニル○○ーナの曲。
このバンドのギターボーカルが大好きで、自殺してしまった時はすごくショックだった。
「優雨ちゃん、そんなに音楽好きなら自分でバンド始めれば?」
「え?バンド??あたしが?」
「見てるだけじゃなくてみんなで爆音鳴らすってのもいいよ」
バンド・・・
考えもしなかった。
モップをかけながらそう思った。