スタジオに置いてある鈴木のスペクターを見て「うぉ!」と上月は感嘆な声を上げた。


「触ってもいい?」


「どうぞ・・・」


鈴木も嫌そうではなく上月の勢いに気圧された感じでいる。

ベースを手に取って構えて「やっぱすげーな」と言いながら音を指で鳴らした。


「鈴木くんさ、これ相当手入れとメンテ細かくやってるでしょ?」


「う、うん・・・。大事な仲間だから。他のも定期的にやってるけど」


「他って後何本持ってるの?」


「10本くらいかな?」


「10本!?」


俺と上月の声がハモった。


ベースをケースにしまいながら上月は呟いた。


「こんなに大事にしてくれるご主人がいてキミは幸せだよ」




上月が去ってから鈴木が言った。


「ここに来てから何か優雨とか上月くんとか色んな人がいるけど、誰も僕を変な目で見ないよね」


俺はふと思いついた事を言った。


「鈴木、このライブハウスの名前知ってる?」


「え?わかんない」


「The fool who loves a friend」


「どういう意味?」


「仲間思いのバカって意味だってさ」