夜になって優雨は仕事をしていて、俺と鈴木は2人でカウンターに座っていた。


「鈴木、ビール飲む?」


「う、うん・・・。何か失礼だけど、こういうハコでライブ見るの実は初めてで緊張するね」


「俺も最初思った」


俺が笑うと鈴木が不思議そうに俺を見た。


「アサヒって、笑うんだね。バイトの時っていっつも無愛想だから」


「それは鈴木に言われたくないけどね。あ、優雨じゃないけどさ、うつむくのやめれば?俺も事故ってから下ばっかり見てたけどギター始めたらあんまり下見なくなったかな?だいぶ歩けるようになったてのもあるんだけどさ」


「うん・・・、そうだね。優雨・・・はすごく一生懸命僕の事考えてくれてるし・・・少し前、見てみようかな・・・」



そんなやり取りをしているとドンと目の前にビールの缶が2つ置かれた。


「上達した〜?アサヒくん」


上月が笑顔で言った。


「上月くん!!あれ?出番は?」


「うちのバンド主催のイベントだからトリなんだよね、だから時間はまだまだある・・・あ!!」


上月が鈴木を指差して叫んだ。それだけで鈴木は萎縮してしまう。


「新メンバーでしょ?で、スペクターの木目の人でしょ?SWRの人でしょ?」


一気に喋り倒す上月に俺もポカンとしてしまう。


「何で鈴木の楽器まで詳しいの?」


「あ!鈴木くんっていうんだ。ごめん、ごめん。俺、上月。バンドのギター兼アサヒくんの先生」


出された手をおずおずしながらも鈴木は「鈴木です」と言いながら握った。


「で、鈴木くんお願いあるんだけど。スペクターちょっと見せてくれないかな?触るのって実は初めてで店長から聞いてからウズウズしてたんだ」


俺はそれを聞いて笑ってしまった。