それを見て優雨は頷いた。


「アサヒは鈴木から見たら勝ち組?事故に遭って大変でさ、でも何とか状況を打開しようとしてギター頑張ってるアサヒは鈴木にとって勝ち組?」


「だってアサヒは顔がいいし、背だって僕よりずっと高くて・・・」


「それだけでしょ?鈴木が過去に何があったかは知らないけど、人をそうやって色眼鏡で見るのやめなよ。人は人、自分は自分。鈴木をバカにするヤツなんて鼻で笑ってやればいいのよ。それがもし出来なかったら、その場にあたしがいたら・・・」


優雨が立ち上がってちょっと助走をつけてから飛び蹴りをした。

鈴木のすぐ横に足がきて鈴木は驚いてへたり込む。


「あたしは制裁加えてやるよ」


そう言ってニッコリ笑った。


「うちのリーダーは強いからね。密林の民族と戦ってるから心強いんじゃない?」


俺が笑いながら言うと鈴木はそのままボロボロと涙を流し始めた。


「何でそんなに優しく出来るんだよ・・・、僕なんかに・・・」


「こら!僕の後ろに『なんか』って言葉は必要ないの!あたしは鈴木のベースが好きだから。一緒にやりたいから。仲間だから。そんだけ」


「愛されてるねぇ、鈴木君」


俺がふざけて言うとようやく鈴木は少し笑った。


初めてみた鈴木の笑顔。



「時間もったいない!練習しようか!あ、アサヒ」


「何?」


「今日の夜、上月のライブあるよ。見る?鈴木も紹介したいし」


「マジ!?見る!!」


俺は久々の上月くんのライブにワクワクした。