「鈴木!!」


優雨が駆け寄って鈴木の手を取った。


「やっぱり来てくれたんだね!待ってたんだよ!!」


そんな優雨の手をパっと払いのけて鈴木が俺達を見た。


「勘違いしないでほしいんだ」


「え?」


優雨が首を傾げる。


「僕はキミ達の惹き立て役じゃないからね。ただベースが弾きたい、それだけだから」


「はぁ?いつ俺達がお前を惹き立て役だなんて言ったよ、お前が勝手に思ってるだけだろ」


俺が呆れて言うと思い切り睨みつけられた。


「ねぇ、鈴木?何でそんな風に考えるの?何が鈴木をそんなにしちゃったの?」


しゃがみ込んで優雨が言った。


「見た目だよ!それに名前!!就職だって決まらない、苦労ばっかりなんだよ!キミ達のように痩せていて顔もいい人達にはわかんないだろうけど!」


「でもさ、鈴木はすごくベースが上手じゃない。それはその鈴木が言う・・・、アサヒ、何だっけ?」


「勝ち組?」


優雨は「あぁ、それ」と思い出したように言ってから続けた。


「あのさ、誰かと比べるのってすごく簡単だと思うよ。でも、誰かと比べて優劣をつける事に何か意味がある?勝ち負けつける意味あると思う?」


鈴木は「え?」と言って黙ってしまった。


「鈴木が勝ち組だって思ってる人だって実は鈴木よりもずっと深刻な悩みやどうしよも出来ない事にぶつかってるかもしれないって思った事ない?」


その言葉に鈴木はなぜか俺を見た。