「鼻歌が曲にねぇ・・・」
ギターにアンプを差しながら呟いていると、優雨の「何?」という声がした。
「いや、独り言」
適当はフレーズを早いテンポでジャカジャカ弾いていると、
「成長したねぇ。てよりアサヒ音楽に向いてるんだよ」
「そうかぁ?」
「向いてなきゃそんなに早く成長出来ないよ。いくらギターが好きな人でも」
僕がギターを見つめていると、ドラムに座った優雨が足でバスドラをドンドンと鳴らしている。
「鈴木?」聞くと頷いた。
鈴木とは今週1回もシフトが同じになっていない。
多分避けているんだと思う。
「どうかな?バイトのシフトもずらされてるし、来るとは思えないけど」
「あたしは来ると思う。だって楽しそうだったじゃない。それ知ったら1人で憂さ晴らしに環境に戻るのって難しいよ」
「そりゃそうだけどさ」
2人でそんな話をしているとドアがゆっくり開いた。
「あ!!」
思わず同時に叫んでしまう。
うつむいたハードケースを抱えた鈴木がそこにいたから。