「こんちわー」


今日もスタジオに顔を出すと優雨はいなかった。


「あれ?優雨は?」


店長に聞くと「休みよ」と答えが返ってきた。

そりゃそうか、優雨だって休みくらいあるよな。


「アサヒ君」


スタジオに行こうとして店長に呼び止められる。


「たまにはここで演奏したら?今日、誰もいないし」


ここ・・・?


「え!?ライブハウスでですか!?」


俺が仰天しながら言うと店長はニッコリしている。


「人前で演奏するのに慣れないとダメよ」


「いやいやいや!レベルが!!無理です、無理!!」


「別に見てるのってあたしだけだけど。優雨も耳はいいけど、あたしも耳がいいのは間違いないわよ。店やってるくらいなんだから」


「えー・・・」


「ほら!早くセッティング!!」


店長に気圧されて仕方なくセッティングを始めた。


見てる時も思ったけど、実際自分でやるって時も不思議と客席に背中向けちゃうんだよな・・・。


ギターをアンプにさして足下にエフェクターを並べると俺は言った。


「超下手くそっスよ?耳腐るかも」


「腐らないよ、ほら、早く!!」


ため息をついてから、目を閉じてイメージする。ちゃんと弾ける自分を。

目を閉じるのは何でか癖になってしまっている。


目を開けてピックを一気に下に下ろした。