「鈴木が好きな曲かけて。スピーカーついてるから大丈夫」


鈴木がIPODをいじるとたちまち爆音が鳴り響く。

この曲は俺も知ってるけど、鈴木がこの曲を選ぶなんて意外だった。


しばらく3人で曲を聴いていると終わったみたいで別の曲に変わった。


「何となくだけどフィーリングでいい?音少し落としてかけながらやろうか」


「そうだね。これは僕も弾けるから」


俺は立ち上がって鈴木に近づくと「曲、俺かけるから」と言った。


鈴木は急いでベースを肩からかけて「大丈夫だよ!」と言った。


「じゃぁ、かけるよー」


そう言って再生を押した。




2人の演奏を見て俺は呆然とした。


優雨は前にも聴いてるからともかく鈴木はまるで人が変わったように身体を揺らしながら演奏している。しかもピックじゃなくチョッパーで。


「嘘だろ・・・」


俺、こんなレベル高いメンバーとバンドやるわけ?




優雨も鈴木の音を聴いて楽しそうにドラムを叩いている。


少し音を下げたIPODから流れる曲も聞こえないくらいだ。




曲が終わるまで俺はただ黙って見ている事しか出来なかった。