店長に挨拶してスタジオに入ろうとすると「ちょっとアンタ」と声を掛けてきた。
「え?」
3人で返事をする。
店長は鈴木に向かって進んできた。鈴木は完全にビビっている。
「それベースでしょ?中見せてみなさいよ」
「え?どうしたんスか?突然」
俺が言っても店長は鈴木を黙って見ている。
鈴木は慌ててケースを置いて中を見せた。
木目調のベースが入っている。
「スペクターね、木目も結構珍しいしアンプは?」
「・・・SWRです・・・」
それを聞くと店長はニッコリ笑った。いかつい顔で。
「センスいいね。それにこのベースかなり使い込んでる。実力は間違いないんじゃない?」
俺は優雨にそっと耳打ちした。
「あのベースって高いの?」
「スペクター?30万くらいじゃない?」
「はぁ!?」
優雨はニヤリと笑うと
「アサヒはムスタング欲しいんでしょ?いくらジャパンでも10万はするから頑張ってお金ためなさいよ」
「10万・・・」
30万のベースに10万、アンプも買ったらいくらだよ・・・
そう考えると目眩がしてきた。