「ありがとうございましたぁ」


深夜のコンビニ。レジ袋を渡しながらやる気なくお礼をいう俺。


時計を見ると深夜3時。


後2時間で俺の勤務時間終了。

帰ったら寝る前に上月君からの課題の曲の練習。

苦なんて全くない。むしろ逆。寝るのを忘れる事もかなりある。

それくらい俺はギターにすっかり魅了されている。



(左利きでよかったなー、右利きだったら絶望的だったな)


欠伸をかみ殺しながら考えていると、視界に入るのはいつものアイツ。



鈴木。確か20歳。


週5勤務の就職浪人の俺となぜか週4はシフトが一緒な見た目からして「オタク」もしくは「秋葉系」な太った暗いヤツ。

表情もあんまりわかんなくて変な髪型で前髪が長くて目がよくわからない。

いつもうつむいてるてるってのもあるんだけど。


明日発売のジャ○プを並べている鈴木を見ていると俺の方がまだマシ?と思ったり、でもアイツは五体満足だし、俺は陳列とか重労働出来ないし。と思うとアイツの方がマシなのかな?と思う時がある。



深夜の誰もいないコンビニでは有線が鳴り響く。


(あ、これ・・・)


最近、爆発的に売れ始めたメロコアのバンドの曲が流れる。


(俺もこんくらいギター弾けるようになんねぇかなー)


そう思って何となく鼻歌を歌いながらレジ前でストローを片付けていると、ものすごい視線を感じた。


鈴木がこっちを凝視している。


目が見えたのって初めて?意外にパッチリ二重?


しばらく無言で見つめ合った。