1ヶ月間、少なくともその間病院以外アサヒは毎日ライブハウスに顔を出した。
あたしはアサヒが引きずるようにスタジオへ歩いて行くのをいつもただ見送った。
アサヒがどれだけ上達しているのかあたしにもわからない。
変に聴きに行くとプレッシャーになるんじゃないかな?そう思ったから。
時々、アサヒの左の指全部に絆創膏が巻いてある日があった。
「アサヒくん、どうしたの!?」
店長が心配そうに言った時にアサヒは照れ笑いをしながら言った。
「ギター弾きすぎて、指全部切れちゃって・・・」
それだけ練習してるって事か、あたしは納得する。
そして1ヶ月後の今日。
スタジオのスケジュールに上月のバンド名が入っている。
アサヒはギターをギュっと抱えてライブハウスで黙って座っていた。
「そんな緊張して大丈夫なの?」
あたしが声を掛けると、アサヒは苦笑いをした。
「事故ってから・・・、いや生きててこんなに何かに一生懸命になったの初めてだからやっぱ緊張する・・・」
「まぁさ、最初は誰でも下手だよ。だから気楽にしなよ」
そう言って目の前にウーロン茶を置いたけど、アサヒは目を閉じて何か祈ってる感じだ。
ただコード覚えたかを見せるだけなのに・・・
あたしは瞑想してるアサヒが不思議でならなかった。