あたし達はしばらく龍平のバンドの演奏を黙って聴いていたけど、アサヒが呟いた。
「やっぱり龍平、ギター上手くなってる」
「え?そうなの?上月の方がどう考えても上手いでしょ」
「そりゃそうだけど、ギター音痴の俺でもわかるくらいにアイツって下手くそだったんだ。だから上京してプロになるって言った時、正直『バカじゃねぇの?』って思ってたんだけど、あの頃よりずっと上手くなってる。努力してんだよ、アイツなりに」
「へぇ・・・」
あたしはいかにもビジュアル系な感じの音楽を聴きながら龍平を見た。
早弾きなんかやって陶酔してるようにしか見えないけど、アサヒがそう言うんならそうなのかもしれない。
それよりもあたしが気になってるのは・・・。
「無理、我慢出来ない」
「え?優雨?」
あたしは立ち上がって陶酔している龍平を押しのけてドラムの前に立った。
「優雨!!」
アサヒと声と同時に音が止まる。
「何だよ」ドラムがあたしを睨みつけてくる。
「アンタってバカ?1人だけ音走ってるのに気づいてないの?」
「おい、バカ女!お前が演奏聴かせろっていうからやってやってるのにまた文句かよ」
龍平が怒鳴る。
あたしは振り返って龍平を見てニヤリと笑った。
「後で土下座すんなよ、バカ男」
ドラムを強引によけてあたしは椅子に座った。
さっきまで龍平達が演奏していた曲のドラムをなんとなく叩いた。
そんなあたしを見て龍平達は唖然としている。