「店長ー、いるー?」


ライブハウスに入るとあたしは大声を上げた。


奥のドアからいかつい顔の店長が出てきて「いるわよ、うるさい子ね」と言った。

そしてアサヒを見て「あ!昨日のイケメン!!」と指差す。


「こんにちは・・・」


アサヒはかなりドン引きしたようなか細い声で挨拶をする。


「ねぇ、今日スタジオって誰入ってるの?」


あたしが聞くと店長はリストを見て言った。


「初めてのバンドね、えーと・・・『RYU』?個人名かしら?もう終わるから終わったら使っていいけど」


「サンキュー」


あたしが笑顔で言ったと同時に「RYU?」とアサヒが呟いた。


「アサヒ知ってるの?このバンド」


「あの、このバンドって、その、ビジュアル系じゃないですか?」


あたしには答えず店長に聞いている。

アサヒの言葉に店長は顔をしかめた。


「そうなの。別にどんなバンドでも構わないんだけど、こっちは。でもビジュアル系って好きじゃないのよ、何でこのスタジオに来たのかしら?」




そんなやり取りをしているとスタジオに続くドアが開いてバンドメンバーが出てきた。


ホストっぽい感じの『the ビジュアル系』なメンツ。


あたしは興味なく眺めてたけど、アサヒの顔は硬直していた。


「アサヒ?大丈夫?具合悪いの?」


「龍平・・・」


アサヒは1人をずっと見つめたまま言った。