「ま、ギターはしばらくスクワイヤーだとして・・・。アサヒ君が好きなアーティストって誰?」


上月が言ったと同時にアサヒが「カート・コバーン」と叫んだ。


「OK。それならストラトよりムスタングだね。ジャパンだとたまにいいのがあるから取り置きしておくよ。お金ためといてね」


アサヒの肩をポンと叩く。


「それよりも大事なのが・・・」


上月はアサヒに隣に座るように手招きした。アサヒも黙って隣に座る。

ギターをアサヒに渡して言った。


「左利きだからまだ救いかな?とりあえずコード押さえなくてもいいからネック持って、ピック持ってみて。持ち方はこうね」


アサヒは受け取ったピックを戸惑いながら握った。


「手をさ、こう下にジャーンって鳴らせる?形とかどうでもいいから」


あたしはその様子を黙って見ていた。

ギターを弾きたいアサヒがピックを持って弦を鳴らせなきゃ何の意味もない。


アサヒはしばらく右手を見つめてから思い切りピックの下へ下げた。

ジャーンという音がアンプを通して鳴る。


それを見て上月が「お、大丈夫じゃん」と笑顔になった。

アサヒはピックをしっかり握った手を見つめて「鳴った・・・」と呟いた。



「アサヒ!大丈夫!音ちゃんと鳴ったよ」


あたしは嬉しくなってアサヒの手を握るとアサヒの手は少し震えていた。



「アサヒ・・・」


「優雨、俺ギター弾ける。すっげー嬉しい」


アサヒがお日様みたいに弾けそうな笑顔で言った。