4曲演奏して『もういいよ』という声が聞こえて汗だくになりながらガラスの向こうに戻った。


橋本さんはペンをクルクルと回しながら機材の奥にあるソファーに「どうぞ」と座るように言った。


「まぁまぁかな?個別にレコーディングはするけど。気になる点が一つある」


お茶を飲みながらタバコを吸っているあたし達は顔を見合わせた。


「入りのタイミングがドンピシャだけど、あの足音でライブもするの?現実難しいんじゃないかな?」


「そこは今、模索中というか・・・」


都築が言った。


橋本さんは頷いてから話出した。


「やっぱりスタンダードに入るべきだと思う。ギターボーカルの彼がドラムの彼女に合図して入る、これでいいと思うけど」


「それをするとあたし達の音はバラバラになっちゃうんです」


「じゃあ、レコーディングしながらそこを徹底しようか」



橋本さんは見た目は穏やかそうだけど目の奥が厳しい人っていう感じがする。


あたし達はとりあえず頷いた。