「ヤバイな・・・、ここで演ったら絶対気持ちいいよな」
都築が呟いた。
「でも、僕らは完全アウェーだからシーンとなるよね?音がズレたらバレちゃうね」
「だーれもいないって思って演れば絶対楽しいよ。響く感じとか」
あたしが言うと「そうかも」と鈴木が頷いた。
「こんなに広いと音が抜けそう。野外じゃないから外しはしないけど・・・、でも抜けるくらいが歌ったら気持ちいいかもしれねーな」
そう言ったアサヒが「あー」ってデカイ声で言った。
反響するように抜けるアサヒの声。
多分、4人それぞれ色んな事を考えてこの場に立っている。
ヘンリーさんの店でライブをする時みたいに。
「どうする?ここで爆音かましてみる?」
あたしが言うと、『だねー』と同調の声。
「よし!演ってみようか!」
あたしは笑顔で3人に言った。
楽屋に戻って龍平にOKの返事を出すと、いつもの嫌味な笑顔で言われた。
「完全アウェーの世界へようこそ。『Jams』さん」
イベントは2ヶ月後。
それまでにあたし達がやらなきゃいけない事は山ほどある。