アサヒは勢いよく喋りだした。


「子供の頃、多分・・・小1くらい。家族で航空自衛隊の飛行ショーを見に行ったんだ。そしたらブルーインパルスが目の前にいてさ、すっごい轟音・・・ってより爆音で飛び立った。俺はそれを見てすごく感動したんだ。妹や母さんは耳が痛いって言ってたけど、俺はその爆音にドキドキした。それからしばらく、俺の夢はブルーインパルスのパイロットになるって事だった。さっきのバンドの音聴いてさ、何か走馬灯みたいにその事がグルグル頭の中を駆け巡ったんだよ」


「・・・うん」


あたしはどう答えていいかわからなくて頷いた。



「忘れてたんだ。俺の心を揺さぶったものはこの爆音と衝撃なんだ」



目をキラキラさせながら言うアサヒを見て、思わず口から言葉が出た。


「だったらアサヒもバンドやってみたら?」


「え?」


「あ・・・」


あたしは自分が発した言葉に自分で驚いた。


腕がしびれるアサヒにそれは酷な事を言ったかもしれない。


案の定、アサヒは自分の右手を見ていた。


でもアサヒはパっと笑顔であたしを見た。


「え?」


「ねぇ、優雨。ギターってリハビリになると思う?」


「リハビリ?ギターが?」


「そう!左手は動くからコードは押さえれる。右手はピックを掴めれば動かすだけだし」


「でも、アサヒって左利きだって・・・」


「今から始めるんだから左も右も関係ねーと思わない?」


あたしはちょっと考えた。けど・・・


「うん!関係ない!!あたしは出来ると思う!」