「何だよ、この間まで出してくれって頼み込んでたクセに」
あたし達は黙って都築を見ていた。
「確かに頼んだのは事実だけど、俺は惹き立て役になるために交渉したワケじゃねぇ!」
「だったら何でジャンルの違う俺らにブッキング頼んできたんだよ?意味わかんねーし」
見かねた鈴木が「都築くん」と止めようとした。
「黙ってろ!デブ!!言っとくけど俺はお前らのイベントに興味があるワケじゃねぇよ!セブンズでライブをやる事に意味があるから交渉しただけだ!」
アサヒは興味なさげに置いてあるビジュアル系専用の雑誌をパラパラとめくりながら「そういう事ね」とボソっと言った。
アメリカのライブ映像はHPに動画配信してて、演奏は正直どうかと思うけど雰囲気はPV並みのいい映像だと自分で言うのもなんだけどそう思う。
アサヒが作曲と作詞で苦しんでる時に偶然ヘンリーさんからアメリカの誘いがあった。
あのお陰でバンド仲は前よりずっといい。
アサヒもそうだけど、都築もバンドをどう売り出そうか考えているから前よりお互い真剣で会話もそこそこするようになったし。
今度はライブのブッキングが来てないあたし達にセブンズなんてデカイハコでやるチャンスが巡ってきている。
(これを蹴るのはかえってマイナスな感じがするんだよね)
ここで蹴ったらセブンズでやる事なんて絶対ない。
少なくとも今のあたし達の実力じゃ有り得ない。
「優雨!帰るぞ!交渉決裂だ」
都築があたしの肩をグイっと力まかせに引っ張る。
「都築、悪いけどリーダーはあたしだから。決定権はあたしにあるし、みんなの意見を聞いてない」