ライブ開始2時間前。


裏口から入ろうとするあたし達を警備の人が声を掛ける。


「君達!オープンは後1時間後!勝手に裏口に来ちゃダメじゃないか」


「客じゃないんで。『Auditory hallucination』のゲストの『Jams』です」


都築が愛想良く言うと「え?」と言いながら名簿を確認している。


「あぁ、『Jams』さんね、どうぞ」


ドアを開けてくれた。




「うわ・・デカイ・・!」


鈴木が声を上げる通りにセブンズは確かにデカイハコ。

メジャーなバンドもやるくらいだし。

オールスタンディングで入れる最大人数は400人。



「ここで演るの?マジで」


アサヒが呆れた声で言った。


「アメリカで成功してる俺達にはピッタリじゃん。凱旋帰国って感じで」


「アメリカで成功?ボロッボロだったでしょ?ヘンリーさんがいたからアメリカで演れたってだけの話でしょ」


はしゃぐ都築に呆れてしまう。



「ハコは後で確認すればいいから、龍平の所にとりあえず行かない?」


あたしはそう言って楽屋に向かった。


楽屋までの長い廊下を歩く最中、


「俺、こんなデカイ所で歌えねーよ」


アサヒが機嫌悪そうな言い方をした。


そうだよね。アメリカといい、いつだってアサヒが望む方向に『Jams』は行かない。