3曲なんてあっという間に終わってしまう。

そして、たかが3曲。されど3曲。


『Jams』を結成して半年以上。


バンドってものを全然知らないあたし達。

ただ音楽が好きってだけのあたし達。

喧嘩しながら出来た曲はたったの3曲。


全員自分勝手で全員仲良し、大事な仲間なんて思ってない。

それぞれが誰を嫌いで、でもそれを繋ごうって誰かが必死で、

1人が追い込まれて作った曲を罵って文句をつけて、

作った本人を追い込みながら、更に自分達も追い込んできた。


半ばヤケクソで来たこのアメリカで、

いつも不安そうで弱いけど実は一番バンドを想っている鈴木も、

口だけは一人前で努力をしないで文句ばっかりの都築も、

ギリギリまで追い込まれて人前で歌うのが大嫌いなアサヒも、

ポジティブなだけで取りまとめがヘタクソなあたしも、


最後の曲が終わると同時に不思議に全員が笑顔で、

鈴木なんか涙を浮かべちゃっている。


アサヒを都築が顔を見合わせて笑顔になった瞬間、


店の中は割れんばかりの拍手と指笛。



『"Jams" ! Thank you and thanks with Henry and all!』
(『Jams』でした!ありがとうございました!ヘンリーさんとそして全ての皆さんに感謝しています!)


あたしがマイクを持ってそう言うと、また拍手が起こった。


4人で前に立って、不思議と全員手を繋いで、手を掲げてから頭を下げた。


ヘンリーさんを見ると嬉しそうに拍手していた。



ライブってこんなに気持ちのいいもんなんだ。


あたしは笑顔でヘンリーさんにピースした。