「よくさ、ライブでバンドの人やるじゃん。ピックじゃなくて指でサビをアコースティックな感じでちょこっと弾いて終わりにジャーンって。それから曲に入るやつ。見た事ない?動画とかDVDとかで」


「あー、たまに見るね。そういうの」


あたしが言うと「そうそう」と鈴木が言った。


「え?俺ちょっとわかんねーよ。見た事はあるけどそれってリード・・・、都築がやるんじゃねぇの?」


アサヒが都築を指差した。


「だよな。俺だろうな。でも、アサヒのタイミングで入るんだから俺が弾いても意味ねーよ。こんな感じだろ?」


そう言って、都築が『バイバイ地球』のサビを指で何となく適当に弾いた、それからジャーンと音を鳴らす。


「それそれ!それをアサヒと都築くんがジャムればいいって事。都築くんが弾き始めたらアサヒはそれに合わせてピックでコード弾きして合わせるの。ジャーンはアサヒが弾いて・・・そしたら一気に曲に入る。アサヒのタイミングになるから大丈夫だし、ダサくないでしょ?」


あたしは都築とアサヒを見て「やってみてよ」と言った。


「え?まぁ・・・とりあえずやってみる?都築弾き始めろよ」


都築が「あぁ、俺が弾き始めたらすぐに入れよ」と言ってピックを口にくわえるとギターを弾き始めた。

その後をアサヒがジャカジャカとコードを弾きながら続く、そして最後にジャーンという音を鳴らした。


「こんな感じ?」


アサヒが言うと鈴木は大きく頷いた。


「そう!このジャーンが終わったら一気にみんなでダダンって入る。どう?」


「悪くはないけど・・・その前に目を閉じてるし、都築が目を開けて弾き始めたら目を開けるって事?そしたら目を閉じて集中する意味がないわ」


「俺がカウントして目を開けたのがみんなと一致するとは思えねーよ」


都築もあたしに同感した。