「都築、普通のバンドってどうやって曲入りすんの?」
アサヒが聞くと、都築が「あー」と言った。
「ボーカル・・・つまりお前がみんなを見て頷いてとか?それぞれ違うけどな」
「僕ら始まるまで目を閉じてるんだよ?それわかんないよー」
「目を閉じるのは初期段階だろ?慣れたらいらねーよ」
「だからその初期段階が明日でしょ!」
鈴木が天井を仰いだ。
「何か音出さなきゃわかんねーよな」
アサヒもドサっとベッドに転がった。
「ちょっと!ここあたしの部屋よ!やめてよ、ベッドに寝るの」
あたしが文句を言うと「はいはい」と起き上がる。
「あ、そうだ」と都築が言った。
『何?』
「アサヒも優雨も英語喋れんだから何か言えよ。その言葉が終わったと同時に入るとかは?」
「あのさー、相手外国人なのよ?バレッバレじゃない、その方が100倍ダサイわよ」
「じゃあ、日本語か?『はじめるよー』ってアサヒが言うのか?その方がダサくないか?俺ら、今後日本でライブやるんだぞ?英語の方がいいだろ」
「例えば?何て言えばいいんだよ?」
「何かねーの?逆に聞くけど。『始まる』的な言葉」
アサヒと顔を見合わせるけど・・・
「ないわよ。思いつかない。やっぱり音がいいとあたし思う。人にはわかんないし、ダサさが伝わらないし」
『音ねー・・・』
もう、ため息しか出ない。