「随分歩けるようになったのね」


長くて細い階段を降りながらあたしは言った。

壁に手をついてるけど、アサヒはゆっくりだけど、ちゃんと歩いてる。


「結構リハビリ頑張ったからね。まぁ、やっぱり転ぶと起き上がるのに時間がかかるけどさ」


「偉いじゃん」


「誰かさんが『世界を変えてやる』って大口叩いたお陰かな?」


イタズラっぽく笑ってる。


ライブハウスのドアの前について、スタッフの子に

「この人、あたしのゲストだから」

と言って、アサヒに「今日はインディーズのイベント」と言った。


ドアを開けた瞬間に爆音が鳴り響く。


アサヒはドアの前にぼんやりと突っ立っている。


「どうしたの?何か飲むでしょ?」


あたしが声を掛けると「あぁ・・・うん」と呟いた。



「座りなよ」


とカウンターのそばの椅子を指差して、あたしはドリンクを取りに行った。


「ちょっとイケメンじゃん。どこで知り合ったのよ」


ドリンカーの子がビールを2個渡しながら言ってくる。


「道で拾った」


「はぁ?」


あたしは鼻歌を歌いながらアサヒが座っているカウンターへ向かった。